都議会レポート特集号2011/6

都議会民主党 緊急提言
省エネルギー型東京づくり・アクションプラン

東日本大震災を受け、都議会民主党は去る4月11日に夏場の電力不足対策をまとめるエネルギー抑制対策PTを発足させ、省エネに向けた取組を検討して参りました。省エネ対策は震災後の電力不足を補う上で重要な取組であると同時に、環境負荷を軽減する人類共通の取組であります。都議会民主党は、5月24日、東京都に対して、今年の夏に向けて効果的な短期的な取組とともに、中長期的に都や国が取り組むべき計画を提案いたしました。

グラフ

1.東京都環境確保条例に加えた取組の実施

都はすでに東京都環境確保条例に基づき、熱、燃料、電気の使用量が原油換算で年間合計1500kl以上となった約1300の大規模事業所に対し2010年から2014年の5カ年の温室効果ガスの削減目標を定め、これを義務化しました。一方で、スーパーやコンビニなど複数の事業所の原油換算使用量の合計が3000klを超える約3万の事業者に対しては削減目標などを掲げず、省エネへの取組の報告を求める仕組みにしています。

  1. 今後、約3万の事業所に対しては、取組の報告を求めることに加えて、事業規模に応じた都としての削減目標目安の提示と、削減目標数値の明記。
  2. 約3万の事業所に対し、省エネに向けた効果的で先進的な事例を提示し、一層の普及啓発に努める。

2.事業者に求めるべき省エネ対策

平年夏季ピーク時(午後1時から午後4時)の電力需要の内訳は、家庭:業務:産業は2:4:3の割合で業務が4割を占めています。業務の中でも空調が1000万kw、照明が500万kwと大半を占め、それぞれへの対策が急務であることが分かります。東京都の調査(2005年)の結果、夏場の室内温度(実測)が25度以下になっている商業施設が大半を占め、冷房の過剰なビルの多さが明らかです。

  1. 商業施設に対する過剰な冷房を抑制するルールづくり。
  2. また、外気導入量が過剰なビルが非常に多いことも挙げられます。国が定めるビル内のCO2濃度は1000ppmであるにもかかわらず、東京都の調査(2005年)の結果、室内CO2濃度が750ppm以下のビルが大半で、換気過剰になっていることがわかります。約40%のビルではCO2濃度管理を行っていないことも分かっています。
  3. ビル内の冷気が必要以上に放出されないように、事業者に対してビル内のCO2濃度の適正管理と、必要に応じた診断士の派遣。
  4. 都は省エネ診断士の無料派遣を行っていますが、事業者の求めに応じて診断内容を決めています。省エネ診断の際には必ず、室内空調温度とCO2濃度を実測し、必要に応じて改善を求める仕組み。
  5. 国が定める業務用建物の一般的な照度基準(JIS基準)はオフィスが750ルクスと定められている一方で、労働安全衛生法に基づく労働安全衛生規則では150ルクス以上に定めるなど二つの基準と基準値の幅があり、事業者は750ルクスを基準とする傾向にあります。また、ビルの大半は実測値で800ルクス~1000ルクスであり、照明が明るすぎる傾向にあります。
  6. 国が定める二つの照度基準は、照度の適正化を推進する上で、妨げになる可能性があります。業務分野に応じた適正な照度が図られるように、例えばオフィスの照度基準を500ルクスに定めるなど、国の基準となる照度の明確化。
  7. 国が定める基準について、他国のオフィスの場合、アメリカが200-500ルクス、フランス425ルクス、オーストラリア160ルクスと日本の照度の半分ほどです。
  8. 照度基準が緩和され、明確化された場合、都は新たに定められた照明照度基準の都民及び事業者への周知徹底と、切り替え促進の実施。
  9. 照明器具が消費する電力は、オフィスビルが消費する電力全体の21.3%、一般家庭では16.1%を占め、電力由来のCO2排出量の20%を照明器具が排出しています。大きな電力消費をする照明器具は国内では9.5億台取り付けられており、非常灯5%、白熱灯30%、蛍光灯63%の内訳になっています。このうち、業務用蛍光灯器具は3億台に上りますが、エネルギー効率の良いインバーター式蛍光灯は41%にとどまり、エネルギー効率の悪い磁気式蛍光灯が59%を占めています。インバーター式蛍光灯と磁気式蛍光灯とでは最大32%のエネルギー効率の差があるため、消費電力抑制ならびにCO2抑制を図る観点から照明器具の取替が図られるべきであります。しかしながら、多くの照明器具は適正な取替時期である10年を優に超え、安定器の絶縁劣化によって発煙事故を起こすものもあり、取替は思うように進んでいません。現在、都は中小企業者向け省エネ促進税制としてHFインバーター方式に切り替えた事業者に対し、設備費用を事業税額から減免する措置をとっています。
  10. 現在、設備の取得価額上限は2000万円であり、その2分の1を事業税から減免する仕組みになっていますが、事業者の申し込みは決して多くありません。省エネ診断士への周知など普及啓発の促進と、国等が用意している補助制度の情報提供の一本化。
  11. 対象設備をHFインバーター方式に加えてLED照明も含めること。
  12. 現在、照明設備のほかに減免の対象設備になっている空調、小型ボイラー、再生可能エネルギー設備で指定されている対象機器の拡充。
  13. 小売店などにはスーパー、コンビニなどで見受けられる蓋のない冷凍庫(オープンケース)の省エネ対応の実施。
  14. 再生可能エネルギー及び蓄電システムの導入の検討。

3.都が率先して行うべき省エネ対策

都は未曾有の事態を受け、民間事業者に先駆けて一層の省エネに努めなければなりません。都はすでに2007年より施設改修の際に用いる建築仕様を省エネ仕様に改めていますが、当面、改修予定のない施設の省エネ化が求められます。

  1. 10年以内に大規模改修が予定されている施設を除く都の施設および都関連施設に対し5年以内に、全ての蛍光灯をHFインバーターまたはLED蛍光灯に切換え実施。
  2. 10年以内に大規模改修が予定されている施設を除く都の施設および都関連施設の照明には5年以内に、施設規模に応じた一定割合の人感センサー、適正照度調整システム、昼光連動制御システムの設置。
  3. 10年以内に大規模改修が予定されている施設を除く都の施設および都関連施設のうち一定規模以上の施設においては5年以内に電力監視装置と外気導入制御システム(CO2センサー)の設置。
  4. 特に都が所管する学校施設の教室、職員室など昼光を利用できる窓側等は調光することで大きな省エネにつながります。都所管の体育施設(学校を含む)ではメタルハライドランプ等の照明が使用されていますが、セラミックメタルハライドランプに交換するだけで約50%(11,466kg‐CO2)の省エネが可能です。
  5. 都は都立学校などの施設の省エネ化対策指針を策定し、1年以内に、これに基づく学校施設の照明、空調の省エネ化計画の発表。
  6. 市区町村学校が学校施設に取り組む際に、都が再生可能エネルギーの導入を含めた省エネ化への改修工事費の一部助成を行う制度の構築。
  7. 都は子どもへの省エネ教育を通じて、広く家庭での省エネ意識の啓発に努めること。
  8. 都立学校施設での生徒の省エネ意識を高めるため、都は省エネ優秀校に対して、省エネのインセンティブが働くように、学校予算(学校エコポイント)の増額の実施。
  9. 再生可能エネルギーの導入を含む省エネ設備への切り替えを行う私立学校・幼稚園への私学助成のさらなる拡充と同時に、私立学校の求めに応じられる省エネ診断士の拡充。
  10. 永い目で見た省エネは家庭での取組が不可欠です。都は家庭で取り組める省エネ対策のメニューを明確化するとともに、節電のあり方についての正しい知識や適切な節電方策の周知を徹底し、より効果的な省エネが図られること。
  11. 家庭や事業所での積極的、かつ優れた取組み事例が広く周知され、取組む家庭や事業所の向上意識が働くように、例えば先進的事業者を都のホームページで紹介することや、省エネ家庭を表彰する省エネ家庭コンテストを開催することなどの実施。
  12. 夜間電力の有効活用や昼間時のピーク電力に対する補完電力確保のため、低価格な蓄電システムの技術開発に対する支援と、蓄電システムを導入する家庭や事業者に対する費用を一部助成する制度の構築。
  13. 築地市場の移転・再整備工事の際には、屋根に太陽光パネルの設置など再生可能エネルギーのさらなる導入の検討を行い、災害時などにおいて電力が絶たれても、市場が自立してエネルギーを確保し、冷蔵・冷凍機能を保てるような設計。
  14. 病院施設などをはじめとする都有施設への再生可能エネルギー導入の積極的な検討と、住宅用太陽光発電システム設置費用に対する一部助成の復活。
  15. 民間事業者が省エネ設備への切り替えを行なう際の資金調達を支援するための仕組みの検討と、省エネ化に対する各種助成制度などの周知徹底。

4.地域冷暖房施設の活用拡充と発電体制の整備

東日本大震災による影響で計画停電が実施され、国民は電力が都市機能をマヒさせる実情を目の当たりにしました。電力を安定的に供給し、無駄なく消費する仕組み作りが急務になっています。現在、都内には76箇所の地域冷暖房施設と1カ所の発電と冷暖房機能を備えた設備を有していますが、発電機能を備えた地域冷暖房施設整備が進まない背景には、初期投資額の大きさがあります。

  1. 地域冷暖房施設整備で認められている対象建築物の容積の緩和をさらに拡大すること。
  2. 地域冷暖房指定区域外にある周辺地において建築主が地域冷暖房システムを知らずに新築、建て替えを行っている可能性があります。より無駄のない熱利用を図るため、地域冷暖房指定区域の周辺開発においては、建築主に対して地域冷暖房システムへの正しい知識と利用促進を図ること。また必要な規制緩和の実施。

なお、このアクションプランは、業務部門と家庭部門にターゲットを絞り、主として短期~中期的な取組についてとりまとめた、緊急の提言です。これらの提案が、都の施策に反映されることを期待します。なお、都議会民主党は、今後も引き続き省エネルギー型都市東京づくりに向けた情報収集や検討を行って参ります。また、国が取組むべき事項については、政府・与党に対して独自に働き掛けを行って参ります。

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