都議会レポート2012/6

都民投票条例の修正案を提出、自民・公明の反対により否決!

平成24年第2回都議会定例会が、6月20日に閉会しました。

都議会民主党は、原発再稼働の是非を問う都民投票条例案の賛否に関して、必要な修正を加えて修正案を提出しましたが、自公が反対し、否決されてしまいました。

私たちは、都民の皆様が求める意見表明の場があってしかるべきであり、適正な都民投票が実現できるよう修正案を提出しましたが、残念な結果となりました。

本リポートにて、私たちの質疑内容をご確認頂き、皆様のご意見を賜りたくお願い申し上げます。

原発稼働の是非を問う都民投票の実現を求める

東日本大震災によって引き起こされた原発事故により、東京まで飛散した放射性物質問題を踏まえ、32万名を超える東京都民から、原発稼働の是非について、都民1人1人の意思表明を求める、都民投票条例の直接請求が行われました。

都議会民主党は、原発稼働の是非を始めとした日本におけるエネルギー戦略の決定は、国が第一義的な責任を有し、福島県などの立地地域住民の様々な意見が尊重されるべきと考えています。

しかしながら、32万名を超える都民が求める意思表明の場である「諮問型」の都民投票は、行われてしかるべきと考え、必要な修正を加えて、実現を求めることとしました。けれども、自民党・公明党の反対で修正案は残念ながら否決されました。

尖閣諸島公有は基本的に賛成 国の責任で永続的な保全へ

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米国ワシントンにおける石原知事の「尖閣諸島購入」表明に対して、全国から8万件、12億円を超える寄付が寄せられています。

都議会民主党も、「個人から公の所有へと切り替え、領土と排他的経済水域を守る」ことに、基本的に賛成を表明しました。

質疑では、所有者の真意を質すとともに、東京都には自ずと限界があることから、公益財団等を検討する必要があること、地元の意向をも踏まえた「尖閣諸島ビジョン」作成支援などを提案しました。

また、政府の全面的バックアップを確保し、国の責任による尖閣諸島の永続的な保全につなげていくことが必要であると訴えました。

石原知事は、「強い政治不信がありながら、私のいる東京なら売ってもよいということになった」「公の所有に切り替え、安定を図るには公共団体が望ましい」「東京自ら調査を行い島の特徴を生かした活用方法を練り上げる」「東京への賛意をとらえ、政府もバックアップすべき」と応じました。

横田基地軍民共用化に向け 国と近隣県との連携強化を

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知事は4月、野田総理に日米首脳会談の機会に横田基地の軍民共用化を、改めて両政府間の協議事項とするよう働きかけ、総理はオバマ大統領に検討を要請しました。

都議会民主党は、共用化に向け、都が国や近隣県との連携を進展させる取り組みの強化を求めました。

知事は、共用化が日本の国際競争力を強化し、国力を維持するための不可欠な国家プロジェクトであるとして、引き続き近隣県と連携しつつ、国と都が一枚岩となって、米側との交渉に取り組むと答弁しました。

新たな首都直下地震の想定 都民は防災対策の推進を

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都は、震災における東京の被害状況を反映し、地震を引き起こす首都圏直下のプレート上面が従来の想定より浅いとした最新の科学的知見を踏まえ、新たな首都直下地震の被害想定を公表しました。

都議会民主党は、都民が都内全域で強い揺れが起こることを意識し、引き続き防災対策に取り組むべきと訴えました。

都は、最新の知見で検証を行ったと述べるとともに、都民1人1人が自助、共助の取り組みを進めるため、都HPや「広報東京都」で多くの都民に伝え、理解を促進していくと応じました。

区市町村の防災対策との連携・協力で減災の推進を

震災での被害や自治体独自の検討から、区市町村では、地域特性に応じた防災対策を進めていますが、解決すべき課題があります。

例えば、豊島区では老朽化した木造住宅密集地域の整備を進めていますが、建替えにおいては、居住者の高齢化や複雑な土地権利関係、建替え後の床の減少など、さまざまな課題があります。

そこで、都議会民主党は、区市町村が地域で展開する防災対策の課題解決に都が連携・協力し、減災を推進すべきと求めました。

都は、木密地域の不燃化促進や、防災隣組の認定を通じた地域の自助・共助の後押しなど様々な対策を進めており、今後とも区市町村が実施する地域の防災対策への積極的な助言、協力を行うことにより、東京の防災力の向上を図っていく旨、答えました。

地震津波と高潮同時発生 複合災害の強化策は

都の被害想定では、元禄型関東地震が発生した場合、東京湾内に到達する津波は最大2.61メートルになります。また、地震津波が、高潮と同時に発生した場合には、防潮堤を越えて浸水被害が生じる可能性があり、更には、水門が機能しなかった場合、東京湾沿岸部(大田区、中央区、江東区、江戸川区など)の浸水想定地域への浸水被害が想定されます。

都議会民主党は、こうした複合災害のシナリオを受け、都の対策強化について問いました。

都は、起こりうる様々なリスクを示し、水門などの耐震、耐水対策や、高潮対策センターの2拠点化など大規模災害に対する備えを着実に講じると答えました。

大規模事故に備え、放射性物質の情報共有を

4月、山口県で発生した化学プラント爆発事故では、火災現場から近隣の倉庫に劣化ウランが多数保管されていたことが明らかになりました。

劣化ウランは、火災で延焼すれば、広範囲に放射性物質が拡散し、甚大な影響が出る恐れがあります。

そうした放射性物質の情報は、国への届出が義務付けられていますが、その情報が地元の都道府県や市町村に提供される仕組みにはなっていないため、都議会民主党は、災害対策として情報共有の検討を進めていくべきと訴えました。

都は、事故を防止し、災害時に的確な対応を講じることは都民の安全に重要であり、情報の適切な把握が必要と述べ、核物質情報を把握する東京消防庁などと連携し、情報を適切に把握すると答弁しました。

臨海部での開発を進め国際競争力の強化を

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都議会民主党が進める「アジアヘッドクォーター特区」について、都は「外国企業と都内中小企業等とのマッチングによって、新製品開発や販路拡大の可能性が高まるほか、東京進出後の地方への2次投資等により、日本全体の経済活性化に寄与する」との認識を披露しました。

また、国際的にも規模が劣る東京ビッグサイトの拡張について、石原知事の「できる限りの拡大をできるだけ早くやりたい」との答弁を受け、都からは「拡張の原案を取りまとめ、利用者等の意見を聞きながら検討を進める」旨の取り組み状況が明らかにされました。

若年者の就業支援と職業訓練の充実を図れ

若年者の就業支援策として、今年度、都は、未就職卒業者と都内中小企業とをマッチングし、正社員化を支援する「未就職卒業者緊急就職サポート事業」の規模を750人から1千人に拡充。併せて、6月から、太陽光発電など成長産業での若者の就業を促す、重点産業分野就業支援プログラムを始めています。

また、職業訓練でも、都は今年度、職業能力開発センターにて、若者向けに機械加工や溶接など延べ32科目、年間1285名の定員で訓練を実施、また、民間のノウハウを活用し、医療事務や情報処理など多様な求職者向け委託訓練を、年間1万2千人を超える規模で展開しています。

都議会民主党は、こうした取り組みの充実を図り、若年者の雇用・就業対策に一層取り組みます。

看護人材確保として離職防止と潜在看護師対策を

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今後一層高まる在宅医療へのニーズに応えるためには、訪問看護ステーション等に加え、地域医療を支える中小病院の看護師確保が課題です。都の「看護職員需給見通し」でも、約2600人の不足とされました。また、看護師の離職率は高く、都内の潜在看護師数は約5万人ともいわれています。

看護師確保のためには、離職防止のほか、潜在看護師の掘り起こしが重要であり、一層の対策推進が必要と主張しました。

都は、これまでの復職研修や勤務環境改善に加えて、今年度から新たに、就職相談会の開催や認定看護師の資格取得支援を実施し、看護職員の離職防止、再就業支援を推進していくと答弁しました。

地域差のある高齢者見守り効果的な取り組みを!

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地域によっては創意工夫をこらした様々な見守りが行われていますが、依然として課題は多く、取り組みに地域差もあります。

都議会民主党は、区市町村において、より効果的な高齢者等の見守りが進むよう、都が一層支援することを求めました。

都は、今年度、見守りの担い手を中心に構成する会議を新たに設置し、これまでの取り組みの検証や先駆的事例の分析を行い、効果的な見守り手法などを検討すると答弁しました。

介護人材確保のため将来の展望を持てる施策を

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都内の要介護高齢者は33万人おり、高齢化が進むと、さらに増加・重度化する見込みです。

そこで、質の高い介護人材の育成と、将来展望を持って働き続けられるための更なる支援策を求めました。

都は、「介護職員スキルアップ研修や、現任介護職員資格取得支援事業等の実施、人材確保・育成事業を行う区市町村を支援している」「今般の介護報酬改定による、介護職員処遇改善加算の創設や、地域区分の見直しによる効果等を把握・分析し、必要に応じて国に提案していく」と答弁しました。

発達障害の特性を踏まえた就学時健診と教育支援を!

他者に興味を示さないといった社会性の障害などを特徴とする自閉症を初め、様々な症状を含む発達障害は、その障害を抱えていることに気づかれにくいことが、いじめや不登校、他の情緒障害などの更なる2次的な問題を生む要因になると言われています。

そこで、都議会民主党は、早期発見・早期支援の観点から、発達障害の特性を踏まえた就学時健診の実施と、自立と社会参加のための発達段階に応じた教育支援の充実を都教育委員会に求めました。

大原教育長は、集団活動時の行動観察といった健康診断の有効性などを区市町村教委に情報提供して充実を図ること、教育支援の充実に向けては、今年度実施の医療等と連携した実証的な研究を通じて、自立と社会参加に向けた教育支援を促進していくと答えました。

島しょ地域の減災対策を!

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海溝型の大規模地震による津波想定が島しょ地域においては非常に高く、迅速な避難が不可欠です。

人命を守るための避難路や備蓄倉庫の整備等、減災対策への支援について、都に質しました。

都では広域自治体として島しょ町村の減災対策の取り組みを支援するため、被害想定の各種データなどの情報提供や、津波による詳細な浸水想定を共同で作成するなどにより、避難誘導の仕組みづくりに積極的に協力していくとの答弁がありました。

プラムポックスウイルス対策を

プラムポックスウイルス(PPV)いわゆるウメ輪紋(りんもん)ウイルスにより大きな被害を受けた農家や観光業者からは、対応の遅さや新たな梅を栽培するまでに長期間要することなどへの不安の声を多く聞くため、PPVの蔓延防止のための徹底した対策が必要と考え、都の見解を質しました。

また、観光の主役ともいえる資源を失った観光への支援策も併せて要望しました。

都では国の指示に基づき、関係市町村の協力のもと、平成21年度から延べ5千人を動員し、感染樹の調査や廃棄作業等を実施しており、23年度までに約2万2千本の感染樹等の廃棄と、その保有者に対する補償交渉を行い、今年度も推定7千本の伐採を見込んでいるとの答弁をもらいました。

多摩産材の活用を!

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都議会民主党では、檜原村で多摩産材を利用した中学校などを見学し、校舎等の木質化は教育効果や健康に良い影響を与えていることが分かりました。

そこで、都内区市町村における多摩産材の公共利用の実例と、より一層の公共利用の促進を図るための対策について、質問しました。

都はこれまで、先行事例の支援として多摩産材を実際に使用する際の費用補助などを行い、今年度は、区市町村向けの説明会の開催、活用事例集の作成などを通じて、利用効果や意義を積極的にPRしていくと答弁しました。

調布・三宅の定期航空路で十分な安全・騒音対策を

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羽田空港から三宅島への航空路線が、平成24年度末をもって、就航困難になる見込みです。

これは、現就航機種が退役することで、羽田での就航が不可能になることが理由ですが、東京都では、その代替案として、調布飛行場から三宅島への就航を目指しています。

これについて、都議会民主党は安全対策や騒音対策が重要として、地元市や周辺住民への十分な協議・説明などを求め、都は万全な安全対策と適切な情報提供に努めると応じました。

島しょ地域の漁業振興策を

島しょ地域の漁業は、資源の枯渇化など、様々な課題を抱え厳しい状況が続いています。島しょの漁業が生き残る道は、管理型の漁業への転換です。

昨年度においては、大島、利島(としま)、神津島(こうづしま)、八丈島周辺海域での漁場造成が行われており、これまでの漁場造成の主な成果と、今後の取り組みを質問しました。

都はこれまで、浮魚礁を神津島と八丈島で、イセエビやサザエを増殖するための「つきいそ」を大島と利島で整備し、漁場を造成してきており、その成果として効率的な漁業操業が可能となったと述べています。また、都は今年度も引き続き大島、利島、神津島周辺で漁場を造成する予定で、今後も各町村や漁協の要望を踏まえ、事業の費用対効果を検証し、対応していくと答弁しました。

2020オリンピック招致 評価を踏まえた招致戦略を

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5月24日、2020オリンピック・パラリンピック招致の第1次選考に東京が選ばれました。

東京は、14項目中の7項目で最高評点をとり、特に宿泊施設の受け入れ体制やコンパクトな全体計画、財政面などが高く評価されました。一方、国内の世論喚起や、電力供給への懸念といった課題が明らかになったため、これら課題にしっかり取り組むよう都に求めました。

都議会民主党は、東京・日本が再び活気づくためにも、引き続き招致を推進して参ります。

「賢い節電三原則」で省エネ・節電の継続を

原子力発電所がすべて稼働を停止している現在の電力供給状況では、現在稼働させている老朽火力発電所の故障のリスクなどもあり、今年の夏も再びピーク電力不足が懸念されます。

計画停電や電力の使用制限を回避するためにも、生活や業務などに支障をきたすことがない、無理のない範囲での合理的な節電と、さらなる省エネルギー化を推進していく必要があります。

この課題への対応について、都は、第1にむだを排除し、無理なく長続きできる省エネ対策を推進すること、第2にピークを見定め、必要なときにしっかり節電をすること、第3に経済活動や都市のにぎわい、快適性を損なう取り組みは原則的に実施しないことという3点を賢い節電三原則として明らかにしました。

スマートエネルギーで高度防災都市の実現を

私達は、今後の東京には、再生可能エネルギーや高効率コージェネレーションなどの、できる限り低炭素な、自立・分散型エネルギーの確保や、エネルギーの需給両面から最適制御を行う仕組みの構築など、都市づくりでの面的エネルギー利用の最適化に向けた取り組みがとりわけ重要と考えます。

この実現に向けた今後の取り組みについて、都は、節電、省エネルギーの技術やノウハウを最大限活用すること、低炭素、自立分散型エネルギーの利用を進めること、エネルギー利用のさらなる効率化を実現するエネルギーマネジメントの仕組みが組み込まれた都市づくりを実現することという3点を実現していくことで、低炭素・快適性・防災力を同時に実現する「スマートエネルギー都市」の実現を目指すと答弁しています。

中小企業対策で無料省エネ診断に期待!

東京電力の電気料金値上げは、中小規模事業者のコストを確実に押し上げることから、都議会民主党は、都が平成21年度より実施している無料省エネ診断の実績とその充実を求めました。

これに対して、都は「これまでの診断結果では、15%程度のCO2削減が見込まれ、相応の光熱水費削減が可能」と述べ、「今年は夏に向けた重点実施で、中小事業者のコスト削減にもなる省エネ対策を支援する」と答えています。

また、都議会民主党は、中小企業の経営力強化に向けて、特許やノウハウといった「知的財産」だけでなく、組織や人材、ネットワーク、ブランド等の目に見えない資産を活かした「知的資産経営」の推進を提案。国や他の自治体での取り組み事例を参考に、その実現を求めています。

建替え・耐震化促進を老朽化マンション対策

東日本大震災におけるマンションの被害では、昭和56年以前の旧耐震基準で建てられたマンションの損傷割合が大きくなっており、これらマンションを耐震化する緊急性が確認されています。

また、都内の分譲マンションストックは増加を続ける一方、築40年以上のマンションも増え続け、今後の急増が予想されています。

こうしたマンションは、大規模改修による長寿命化や建替えによる再生が求められています。

都は、法制度の改正に関する国への提案や、マンション管理組合を直接訪問する啓発隊を今年度から派遣するなどのマンションの耐震化促進、管理組合への建替え・改修アドバイザーの派遣や、建替え時の共用部分の工事費への補助などにより、マンション再生を支援していくとしています。

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